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更新日 : 2026/01/13
2025年年末の一冊
無理していい人でいなくていい。歴史に裏打ちされた「大人の毒」が、心の平穏を連れてくる。
毎年、年末になると本屋さんに足を運び、平積みにされている本の中からタイトルだけで一冊を選ぶことにしています。今年、私の目に留まったのは『エレガントな毒の吐き方』という本でした。
最初は、思わずニヤリとしてしまうような皮肉の効いたエピソードが詰まった短編集を想像していました。しかし、実際にページをめくってみると、良い意味で予想を裏切られる内容でした。そこに書かれていたのは、環境を変えるほどではないものの、日々断続的に受けるコミュニケーションのストレスといかに向き合い、いかに自分の心の平穏を守るかという、切実で知的な「処世術」だったのです。
特に印象に残っているのが、**「近しい相手への嫌味こそ、隠すくらいがちょうどいい」**というフレーズです。
感情をむき出しにしてぶつかれば、自分も相手も傷ついてしまいます。かといって、ただ我慢するだけでは心が持ちません。相手に悟らせないほどエレガントに「毒」を忍ばせることで、波風を立てずに自分の感情を昇華させる。それは、大切な関係を破綻させないための、大人なりの優しさなのかもしれません。
第3章の具体的な「レッスン」部分は、正直なところ私にはあまり面白く感じられなかったのですが、本書の真骨頂は別のところにありました。
面白かったのは、京都と東京という二つの都市の歴史的背景から、そこに暮らす人々の文化や習慣を紐解いていくプロセスです。なぜその地に「エレガントに毒を吐く文化」が育まれる必要があったのか。その歴史的な必然性を論理的に解説する視点は非常に鋭く、久しぶりに手にした人文学的なジャンルの面白さを存分に味わうことができました。
『毒』という言葉のイメージが、読み終えた後には『自分を守るためのしなやかな知恵』へと変わっていました。
直感だけで選ぶ今年の一冊は、なかなかのアタリでした。年末の本屋通いはいつまでも続きそうです。
